2012年7月31日火曜日

活動報告(7月・資源と国際政治)


はじめまして、資源と国際政治分科会参加者の菅谷智です。7月の活動報告を致します。

7月はサブトピックとして取り上げたテーマについての勉強会を主に行いました。夏休みに入り、インターンや帰省などで東京を離れる参加者がいるため、今後のミーティングの予定や話し合う内容についても適宜議論をしました。
(1)     8日:レアアースの勉強会
 朝一で集まってレアアースについて勉強しました。内容は主に、(1)レアアースとは何か、(2)中国の非鉄金属政策と輸出抑制の背景、(3)中国のレアアース輸出規制に対する日米欧によるWTO提訴の内容でした。勉強会の前の週にパネル設置の申請がなされ、7月には南鳥島でレアアース泥が発見されるなど、動きのある中での勉強会で色々な話題が出ました。

(2)     16日:今後の方針を議論+南スーダンと農地争奪の勉強会
 南スーダンの資源問題と、農地争奪についての勉強会を行いました。南スーダンは自分が発表役で、スーダン・南スーダンの基礎情報から歴史、国内民族間対立の構造を交え、石油資源を巡る紛争を立体的に理解できるように工夫しました。中国とスーダンとの関係も押さえて、議論しました。その際、「開発援助のあり方」や「資源配分」ができる限り抽象的で表面的な議論にならないよう多くの論点を出しました。参加者各人で重視する点が微妙に異なり、時間が足りなくなったこともあってまだまだ議論が必要なようです。
 蛇足ですが、2010年のスーダン産原油輸出の11%が実は日本向けです。中国向けが68%ですが、日本も輸入してるんですね!
 農地争奪は、水や食糧などの供給不安を背景に、それらの需要国が他国の土地を大規模に購入・長期リース契約を行うことです。「新植民地主義」として批判されており、代表的な買い手として中国、韓国、サウジアラビアなどがあります。日本政府が現在取っている立場を含めて、環境や開発に強いNさんが詳しく解説してくれました。

(3)     25日:東シナ海の勉強会
 東シナ海問題について、概要や国際法上の論点を議論しました。ガス田問題の経緯、日本政府の法的立場などを押さえました。日本にいると中国の主張に関する情報が中々入って来ないのですが、中国政府の論理もしっかり押さえました。

 これらの勉強会はいずれも有意義なものでしたが、「どのような問いを立てるのか」という重要な課題が依然として残っています。資源と国際政治という非常に大きなテーマを、如何に東大生と北京大生の「価値観」の違いが浮き彫りになるように、深みのある議論ができるように問題設定できるか?これが分科会の成否の鍵となることは間違いありません。非常に難しい課題ですが、これまでの分科会ではなかった論点を出せるように全員で努力していきたいと思います。

おまけのQ&A(スタッフさんから)
  北京大生と議論したいことって何ですか?
北京大生と議論したいことは山ほどあります()。日中間の問題と大きく構えるより、そういう問題と向き合う個々の固有名詞をもった北京大生にできる限り接近したいです。ミクロな存在の彼らの声をじっくり聞いて、マクロな中国が見えてきたら面白いですね。
 他には、議論する際に心がけたいことなのですが、できる限り相手にない問いや視点を提案したいと考えています。「あなたはこう思う、私はこう思う」の相対論にならないよう、どんどん相手を追いつめて(相手に追いつめられて)、本音の議論をしようと思います。

2012年7月26日木曜日

活動報告(7月・移民)


 こんにちは。〈移民〉分科会参加者の森泉です。この一ヶ月の私たち移民分科会の活動について報告いたします。
 7月も先月に引き続き、週に一度のペースで分科会ミーティングを行ってきました。この1ヶ月は主に、セッション中に扱うテーマを決定するための話し合いが続きました。
 629日、76日の2回のミーティングでは、それまでに参加者が挙げたトピックを使って、それぞれのトピックにつき30分程度の模擬ディスカッションを行いました。普段の移民分科会のミーティングは日本語で行いますが、ここでは英語でも議論をしました。実際のセッションであれば少なくとも1日~数日間の時間をかけるであろうトピックを30分で議論することには限界も感じましたが、議論を通じて参加者各自の興味関心や価値観が垣間見えたように思いました。この模擬ディスカッションや、全体ミーティングでアラムナイの方々からいただいたアドバイスを踏まえつつ、前回720日のミーティングで以下のようなテーマを決定しました。

①国家のあり方と移民
 日中は、どのような国であるべきか、移民に対して国家はどのように対応するべきか、という比較的大きな枠のテーマです。現状の国民国家(nation-state、日本=民族的にある程度均質的な日本人によってなる国家という考え)は現代の、人々が国境を越えて行き来し活動する社会においても成立しつづけるものなのか、維持し続けるべき・維持しうるものなのか、という疑問から、現代のグローバル社会においてあるべき国家のあり方について意見をぶつけ合おう、というテーマです。
 抽象論、あまりに漠然とした議論になってしまわないよう、このテーマのもとで、教育、ビザ・入国管理、社会保障、国籍などの具体的な場面での私たちが考える国家のとるべき姿勢を探ることになりました。具体的にどのトピックを選択するかはこれから検討しますが、個別のトピックでの議論を通じて現在の日本・中国の移民に対する政策の本質・矛盾なども見えてくるかもしれません。

②移民と労働問題
 ①ではかなり幅広いテーマを設定しましたが、2つ目のテーマは、国家のあり方というテーマの一部でもあり、なおかつ企業と移民労働者の関係のような必ずしも国家のあり方のみで語ることのできない側面ももつ労働問題を選びました。①のテーマではあくまで私たち参加者が自らの価値観に基づいて考える国家のあるべき姿を語ることが議論の主軸になると思いますが、このテーマでは、実際に日本や中国が抱える移民の労働に関する問題を具体的に取り上げ、勉強をしながら議論ができればと考えています。

③グローバル人材
 以上2つのテーマに加え、特にエリート層の移民を対象とした議論もしてみたい、という意見がでています。

 今後は、それぞれのテーマのなかで具体的に扱うトピックや問いを設定すると同時に、それぞれのテーマ、問いについての勉強を進める予定です。また、移民研究などを専門とされている先生にアドバイスをいただいたり、セッション中のフィールドワークの内容を考えたり、といった活動も予定しています。

以上をもって7月の活動報告とさせていただきます。今後とも応援よろしくお願いいたします。

2012年7月9日月曜日

活動報告(7月・幸福と発展)


初めまして、<幸福と発展>分科会参加者の宇佐美(経済学部4年)です。
ここでは、前回の勉強会についてのまとめを担当させていただきます。拙い文章ですが、どうぞお付き合いください。

【概要】
日時:6月30日(日)
参加者:寺井さん、打越くん、山崎くん、光島さん、宇佐美
内容:<日本の不平等と個人化> <競争(後半参照)>

【前回の勉強会で何やったの?】
 打越くんが、「日本の不平等と個人化」というテーマでプレゼンを行ってくれました。
戦前、戦後、現代という近代化の過程の中で、マクロ、メゾ、ミクロという縦糸の中でどのような変化があったのかという内容でした。
具体的には…
マクロ→産業化の諸相(実質GDP、産業別人口などの変化:経済学チックですね)
 議論:特になし
メゾ→社会階層としてみる(中意識論争、相対的剥奪とか:社会学チックですね)
 議論:人は、自らの幸せを判断する時、何に準拠しているのか?(相対的剥奪によると、人は自らが準拠していない集団とは比べない)
 議論②:「構造化された主観」とは?(ざっくり言うと、意識ってどこから来るんだろう?という話)
ミクロ→思想的なところ
 まとめてみる:~変化の3ステップ~
①戦前は、努力・勤勉・忍耐といって立身出世主義のエートスがあったが、経済成長とともに野心が冷却され、サラリーマンと美徳へと変わっていった。
②戦後はアメリカのような物質的な豊かさが理想とされ、基礎材が普及し、階層の平準化が進む中で、つかの間の「幸福」な社会が実現。「努力」型社会の成立。
③経済成長の鈍化、人口減少、高齢社会を特徴とする現代になると、平等神話が構造的に崩壊した。「実績」型社会、自己責任社会の到来。

面白かった論点
・物質的な豊かさが満たされた(と思われる)現代の社会で、非物質的な幸福の追求などトップダウンで出来るのだろうか?
・政策的なインプリケーションを求める議論は難しい。むしろ、幸福と発展という言葉を切口に、自由、競争、(不)平等、共同体、消費社会など、価値観が出せる議論を展開しては?
そこで…私が競争についてぶっこんだので、後半は競争に関する議論となりました(笑)

【競争について】
競争についてぜひブログに書いてほしいと頼まれたので、自分の価値観も混ぜながらここにまとめます。

・そもそも何のために競争するのか? 競争の先には幸せが待っている?
 振り返ると、私たちはこれまで、様々な競争をしてきた。受験競争、部活での競争、一定数の優をめぐる競争、就活という競争…。では人ななぜ競争をするのだろうか?あなたはなぜ競争をしてきたのだろうか?
 競争賛成派の意見としては、<自己成長>のためというものがある。競争した結果富を得るというよりはむしろ、競争の過程で自己成長を図るというものだ。他にも、負けず嫌いで他者に認められたいから競争をするといった人もいるかもしれない。反対派の意見としては、競争で追われてしまっている、競争に疲れてしまう、競争からドロップアウトした人はどうするのか?というもの。

・ちょっとした考察 ~競争による利益とドロップアウト対策~
 競争による利益は、一般には、競争を通じた切磋琢磨によって社会により多くの価値を生むことである。そのもとで個人は、競争そのものの楽しさや競争に打ち勝った時の報酬(金銭面・非金銭面含めて)があるから競争に参加するのである。それゆえ、競争原理が働くことは「努力すれば報われる」社会に一般的にはつながれると考えられる。
 一方で、競争からドロップアウトした人にどう対処するのかといった問題もある。経済学的には、競争で拡大したパイを再分配すればよいという話になるが、ここでは、競争を最も身近に考えてみよう。

 私は、今の社会で競争から逃げることは難しいと思う。受験競争・出世競争といったよく注目されるものでなくても、会議でよりいいアイディアを出そうとか、他の人より早くバイト先のマニュアルを理解しようとか、他の人よりいいレポートを書こうだとか、Aくんより早くビールを飲もうとか、目立たないところで人は、日々、小さな競争をしてそれを楽しんでいるのではないだろうか。また時には、一日腕立て・腹筋・背筋100回といって自己の目標との競争をしているかもしれない。
 たとえ大きな競争にドロップアウトとしても、次の世界では違った競争の仕方になるし、プレイヤーも異なるだろう。以前の仕事での競争は嫌いだったけど、次の場所での競争なら楽しめると言った人もいるかもしれない。そう考えていくと、ドロップアウト対策で必要になってくるのは、再チャレンジできるかどうかだという気もする。つまり正当な再チャレンジの競争環境が整備されているかどうかが重要なのではないか。(「正当」の定義は難しいのですが)

 とまあ、これ以上述べると終止がつかなくなるので、後は皆さんの思索にお任せします。競争の話は、価値観が前面に出るし、定義によって意味合いが変わってしまうという点でとても面白いと思います。

 最後に競争に関する書籍を二つほどご紹介しておきます。二つとも読みやすい新書かつ、書き手も有名な経済学者なのでお薦めです。
「競争と公平感 -市場経済の本当のメリット-」(大竹文雄)
「競争の作法 -いかに働き、投資するか-」(齊藤誠)

以上、長くなりましたが、前回勉強会のご報告でした。

2012年7月3日火曜日

活動報告(6月・資源と外交)

こんにちは、<資源と国際政治>分科会の参加者の神場です。
6月23日(土)には全体ミーティングも終え、アラムナイや他の分科会の方々から様々なフィードバックを頂き、話し合いが本格化してきました。
それでは、私たちの分科会の活動報告をさせて頂きます。

1.フレームワークづくり
まずはじめに、私たちは、この分科会の意義を
「日本と中国、それぞれの将来のリーダーが、現在多くの紛争の原因となっている資源の問題について話し合うこと」
と定め、
「資源をめぐる利害対立の本質を見極め、対立している国同士の主張とその根拠の違いを明らかにし、将来の解決への展望を探る」
ことを目的としました。
そして現在、この意義・目的にかなうサブトピック(ケーススタディ)を選んでいるところです。
今残っているものは3つ、
①レアアース禁輸問題
②東シナ海の海底資源問題
③南スーダンの開発の問題
です。
①レアアース禁輸問題
…日中双方がステークホルダーであり、また時事ネタとしても割と新しいもので、熱い議論が期待できます。自国の資源を政治的パワーとして利用することはどこまで許されるか?という、モラルに関する抽象的な議論にも持ち込めることが予想されます。
②東シナ海の海底資源問題
…こちらも日中の対立がはっきり見て取れ、議論する価値は十分にあると思われるものの、
①と違って概念的な議論にはつながらなさそうであることと、①②のふたつだとトピックとしてやや独自性に欠けることが懸念点です。
③南スーダンの開発の問題
…これは少し説明が必要かもしれませんが、ここで指しているのは、南スーダンが独立をめぐって紛争状態にあるときにも中国はスーダン・南スーダン地域で石油開発を盛んに行ったため人権を無視していると非難され、その後も南スーダンに融資を続けていることに関する問題です。南スーダンにおける問題に限らず、アフリカ諸国でも、その他の地域でもよいのですが、国際社会における中国の振る舞いについて、といえます。自国の利益のために他国の利益を無視してもよいのか?という、モラルに関する議論につなげられるでしょう。また、これは独自性のあるおもしろいトピックだと思います。
以上3つの中から、北京大側とも話し合って2つに絞り込もうとしています。(3つのままの可能性もありますが)

2.勉強会
まずはトピックとして扱うことが確定的なレアアース問題についてから勉強を開始します。
資源の政治的利用について、レアアースの現状について、などを各自が調べてきて発表し、その後皆で議論する、というゼミ形式をとります。
それとは別に、OECD Trade Policy Studies “The Economic Impact of Export Restrictions on Raw Materials” を読み進め、基礎知識を得たいと思います。
ある程度勉強が進んだところで、サブトピックごとのフレームワークを固めていきます。


以上をもって、<資源と国際政治分科会>、6月の活動報告とさせて頂きます。

神場