2012年9月30日日曜日

北京セッションを終えて(幸福と発展)


  はじめまして。幸福と発展分科会に参加している津田です。今回は北京セッション中の活動を紹介させていただきます。

 日中間の状況の変化を受けて、私たちは主にスタッフの方を中心として直前まで渡航するかどうかの議論を重ねました。渡航後しばらくはホテルで待機という話もありましたが、17日に渡航し、18日の午後から無事議論をはじめることができました。私たちのはじめの議題は「幸福」についてのgeneral discussionで、まず個人が考える幸福を紹介し、「幸福とは何か?」「どのように定義/分類できるか?」を考えました。実際に自分が感じる身近な幸せや、どうなったら幸せかという条件から、幸せの分類や順位付けなど、様々な観点で白熱した議論をしました。結局幸福の定義はしませんでしたが、ここで出てきたmaterial-mentalな幸せ、contentsatisfactionなどは後の議論でも活かされたように思います。
19日からは私たちのサブトピックであるfamilyneighborhoodにうつりました。これらは最も身近なsocial capitalであり、個人の幸せに直接関連するものとして取り上げました。主に中国と日本の状況の違いを発見/確認し、幸福のあり方がそれぞれの社会・文化に影響を受けることを認識しました。

 事前にアラムナイの方からも言われていたことではあるのですが、議論を通して北京大生の英語力とプレゼンの質の高さには驚かされました。英語について、彼らがどう感じているかは聞いてみなかったのでわかりませんが、ことばの問題で表現できない場面はほとんどないのではと思います。また、主張したいことを表現できるだけでなく、ことばのつなぎ方など、英語でのやりとりそのものに慣れているという印象を受けました。プレゼンはまずpptの完成度が高いです。私がプレゼンテーションを作ると、どうしても説明したい内容をそのままスライドに書いてしまい、文字が多くなります。一方で彼らは、キーワードだけを取り出して、さらにアニメーションを利用して視覚に訴える、主張のサポートになる内容を載せるなど、pptを最大限活用していました。次に、ふだんの議論とプレゼンの声や表現を使い分けている人がいることにも驚きました。少人数での議論や普段のおしゃべりとプレゼンでは、目的も相手も違います。彼らの態度からそんな当たり前のことを再認識させてもらいました。
 あまり誉めてばかりも悔しいので批判的な面を探すと、とても頭の回転は速いし英語も流暢なのですが、「何のためにこの議論をしているのか」という目的に対する意識は低かったと思います。後述しますが、目的が曖昧だったことは東京側も同じです。が、曖昧だからこそ意識する必要があったのではないでしょうか。しかし、北京大側から議論全体への配慮は感じられませんでした。このことを上手に伝えられなかったこと、話し合えなかったことは残念な点でした。

 北京セッションは、準備を重ねてきたとはいえやはり慣れない点も多かったです。議論の仕方や、何のための議論なのかという目的、想定する到達点を模索しながら議論をしている状態でした。京論壇の趣旨である「価値観の議論」も、どのように議論すれば価値観を議論できるか手探りでした。その結果、中間発表の前日になって議論を再度掘り返し、それまでに確認していた中国と日本の状況の違いについて、「どういう経緯でそのような状況になったのか?」「現状をどう捉えているか?」「それはなぜか?」と考えました。当然徹夜で準備をすることになりました。たいへんハードな経験でしたが、このときにはじめて議論を深め、価値観の議論に近づけたように思います。そもそも前提として、まだお互いに遠慮があり、どこかで率直な議論を避けていたかもしれません。明日から東京セッションが始まりますが、この経験を活かして議論していきたいです。

 最後に、今回、この時期に渡航したことについて言及させてください。冒頭でも述べましたが、日中間の状況の変化を受けて、北京セッションの開催自体が危ぶまれました。現地では、万里の長城のオーディオガイド案内で日の丸がはがされ(中国語の横に中国の、英語の横にイギリスの、フランス語の横にフランスの国旗シールが貼られていました)、街中で日本人お断りの掲示を出す飲食店や、吉野家が中国国旗を掲げるのを見かけました。こういった状況で私たちが無事北京セッションを終了し帰国するために、北京大側は多大な配慮をしてくださったことでしょう。東大側の参加者のご家族、関係される方にも心労をおかけしたと思います。中国ではみなさまに感謝すると同時に、だからこそできる限り多くのものを得て帰ろうというつもりで活動してきました。無事帰国することはできましたが、残りの東京セッションでもこの気持ちを忘れず活動し、最終報告会では京論壇の活動の意義をみなさまにお伝えできればと思います。

 残り一週間、しっかりと議論していきます。お忙しい時期とは存じますが、8日の最終報告会で成果をご覧ください。

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