2012年9月29日土曜日

北京セッションを終えて(資源と国際政治)


 初めまして、「資源と国際政治」分科会参加者の中楯知宏(新領域創成科学研究科M1)と申します。今回は北京セッションでの活動について報告させて頂きます。

1.       議論のトピックと概略
北京セッションで話し合ったトピックは以下の3つです。
   レアアース禁輸
   スーダン
   農地争奪

   レアアース禁輸では2010年におきたレアアース禁輸問題を取り上げ
Do you think it is proper for China to restrict export of rare earth to Japan?
という問いから始め、2010年のような「通常時」と「非常時=international conflictの状態」にわけレアアース禁輸について議論しました。
 「通常時」に関してはレアアースに関する環境破壊、価格の低さが争点となりました。北京大側は環境規制が必要だと考え、東大側もそれによる禁輸は受け入れられると考えました。一方現在の低価格に対応するために、北京大側はより規制をかけるべきだと主張し、東大側は規制を強めることに反対し、フリーマーケットによるmutual benefitを主張しました。
 2010年のような「緊急時」に関しては北京大側は政治問題に今回の様な禁輸という経済的なアプローチをすることは外交カードとして当然だと考える一方、東大側は経済と政治は分けて考えるべきだと考えました。
 今回の議論から中国は資源を比較的持っている国であり、自国の資源を外交カードやnational securityに用いるべきだという考えが見られました。一方日本は資源を持っていない国であり、自由経済等によるmutual benefitreputationを重視するべきだという考えが見られ、国家としてのスタンスの違いが見られました。

②スーダンのケースは日本と中国以外の国に対する資源開発のあり方を問うことを目的として扱いました。まず以下の様な問いからスタートしました。
How do we evaluate China’s involvement into the development of African countries, such as Sudan?
 この問いから東大側は中国の資源開発は現地の環境を破壊しているなど持続可能ではないという意見が見られた一方、北京大側は雇用創出などを挙げ現地の人々のためになっているという意見が見られました。ここから更に持続可能な開発や雇用に関して議論を行いました。

③農地争奪では
 “What do you think if part of your country’s land is purchased by foreign countries?”
という問いからどういう要素が我々の判断に影響を与えるのかを分析し、それに基づいて以下の様ないくつかのKey Questionをたて参加者個人の価値観を探りました。
ü   Does land equal to other forms of resources?
ü   What special sentiments are attached to the land? Why?
ü   Do national images influence our judgment?
 これらのQuestionから土地は水や石油といった他の資源とは違い、生産国から持ち出せない、土地にはそこに住む人やそこで過ごした人の記憶が宿っており、他の資源とは違うといった意見から土地という資源に対する個人の価値観が見られました。また国のイメージが判断に影響する場合としない場合があり、それぞれの価値観として国に対する感情や脅威、また主権や資源ナショナリズムといったものが見られました。


2.       議論を通じて見えた北京大生の印象
 北京大生だからとか中国人だからどうこうという印象はわかりませんが、普通に同じ学生だと思いました。特に北京大生だから凄かったとかは、まだ相手を本気にさせていないだけかもしれませんが、無かったと思います。ただ「価値観の議論」をすすめて行く上で議論の進め方やそもそも「価値観」とは何なのかといったところに東大側と北京大側の違いを見る事はありました。


3.       東京セッションへの展望
 北京セッションでは議論の進め方を巡って北京大側と東大側で対立ができたりしましたが、その都度お互い本音で話し合い、どういった議論をすればお互いが求める価値観がでるのかを確認することができました。また議論をする環境も、少人数で行ってみたり、北京大と東大で別れて座っていたのをミックスしてみたりといろいろと試行錯誤を繰り返しました。
 東京セッションではこういった北京セッションで作った議論の土台を活かしてさらに各トピックを深堀していき価値観の議論ができるのではないかと期待しています。

4.       この状況で北京にいった事について
 このような時期に行ってこそ京論壇の価値があると思います。もちろん参加は各個人の意志に委ねられましたが、団体として設立時の経緯や設立者の思いから考えても今回の渡航は当然だったように思います。またこのような時期だったからこそより一層日中関係について考える良い機会になったと思います。大変難しい時期であったと思いますが、渡航およびセッションを実現させてくれた全ての関係者に深く感謝したいと思います。


5.       北京渡航中に考えた事
 セッションの前半はデモなどの関係から外出できませんでした。そんな中完全に個人的な思いですが、デモを実際にみて、デモをしている人達と話がしてみたいとずっと思っていました。どうしてデモをするのか? 何に本当は不満を抱えているのか? 日本人がかつてあなたに何をしたのか? ラーメンをかけたらそれで満足なのか? デモをしている人達は何を本当に求めているのか?メディアなどから入ってくる情報で判断するのではなく、実際の当事者からの声が聞きたいと考えていました。日中の対立を解決するために本当に聞くべき声は誰の声なのか? そんなことをデモとは無縁な北京大内のホテルで考えていました。

 以上、長文駄文失礼致しました。ここまで読んで頂きありがとうございました。まだ東京セッションもありますし、議論の詳細は最終報告会でより詳しく聞く機会があります。ご関心のある方は是非。東京セッションも頑張って来ます!

中楯知宏


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